チタンとクロモリと剛性の話

2020年1月31日

色々材質について語られますが

初めに、チタンボルトやクロモリアクスルを使用することを否定するものではないです、使用することで何らかの変化はあります、ただそれは巷でいわれていることが本当とは限らないですよというお話なだけです、その辺の見極めはきちんとしましょうと言いたいだけですので、誤解なさらないでくださいね。

カスタムパーツの材料にチタンやクロモリを使用している話はよく聞きます。

ですが、その製品の売り文句に関して疑問を感じる事が多々あります。

例えばチタンボルト、剛性アップとか謳っているけど、本当にそうでしょうか?

それでは、ちょっと各材質の物性について。

まずは、チタン。

64チタンの物性ですけど

引張強度 980N/mm2

0.2%耐力 920N/mm2

ヤング率 113GPa

比重 4.43

スチール(ここではSS400について)ですが

引張強度 400N/mm2

降伏点 235N/mm2

ヤング率 206GPa

比重 7.85

個人的には引張強度を比較するよりは、引張強度は破断する強度なのでバイクの部品などの比較に使うのはその前の降伏点で比較した方が良いんじゃないかなぁ?とか思います。

降伏点とは?

降伏点(非鉄の場合は0.2%耐力)は、力を加えていって伸びたり、曲がったりして元に戻らない変形を起こす(塑性変形)のが始まる点のことです。それ以上力が加われば元に戻らなくなってしまいます。

以前にも書きましたが剛性(たわみ難さ)は、ヤング率(縦弾性係数)を見ます。

ヤング率って?

簡単に言うと一定量の力を加えたときに変形する度合いを示したもの。ただし弾性域での話で塑性域でのことではないです、降伏点を超えない範囲での話です。

ではSS400とチタンを比較した場合、チタンは同じ形状ならば重さは44%程軽く、3.9倍の荷重まで耐えられますが、1.8倍変形し易くなる(45%ぐらい剛性が落ちる)という事になります。

ちょっと待ってよ!レース用のファクトリーマシンにはチタンボルトが多用されるけど何なのよ!とか言うあなた、それはですね、設計時からチタンボルトで目的の剛性が出るように設計されているからです。

一つは強度がが向上した分、締め付けトルクを増やせますから、締め付けトルクを増して増した軸力で締結剛性を上げるんですね。

やわらかいから伸びる、ですけどちぎれないので、締め付けトルクを増して発生する軸力でボルトを締めればたくさんボルトが伸びる伸びたボルトは言わば強力なばねのようなものなので、スチール系では降伏点を超えて伸びてしまう様な軸力でチタンボルトを締めれば、スチール系のボルトより強固に固定されているという訳です。

ただね、これもですね、ボルトの強度は上がってもネジ穴の強度は上がりません、本来ならねじの長さを増してネジ穴の強度を担保するか強度のある材質のねじ穴を用意するかしかないわけで、市販車両の材質置き換えだと限度がありますわね、なのでやっぱりチタンありきの設計でないと本領発揮させるのは難しいと思います。

もう一つはボルトの数を増したりボルト径を大きくしたりといったことで目的の剛性が出るようにするわけです、やはりこれもチタンありきの設計するしかないわけです。

ですのですでにあるボルトを変えるだけでは簡単には剛性が出ないというのもわかるのではないかと思います。

市販の鉄系の部品を同じ形状のままでチタン化したら1.8倍変形し易くなりますから!おおむね半分の剛性ですよご主人!

あとですね、チタンは、降伏点と強度の数値が非常に近くほとんど伸びずにポッキリと破断してしまいます。

それほど前兆が無いので、安全率を高くしないと危険だったりします、頑丈だからと強度ぎりぎりで使うとある日突然ポッキリ逝ってしまうなんてこともあるかもしれないんです。

話は変わって、クロモリシャフトとかで言われるクロモリはどうなんでしょう。これも剛性アップとか言ってますよね?

SCM435の場合(熱処理後の場合)

引張強度 930N/mm2

降伏点 785N/mm2

ヤング率 206GPa

比重 7.85

ヤング率に注目、クロモリもSS400も変わらないという驚愕の事実が!!!

そうなんです、純正と同じ形状であれば、剛性が上がると話題のクロモリ製のアクスルシャフトに変えても剛性は変わらないんです。

クロモリも鉄ですからね、同じヤング率なんです。

クロモリの部品に変えて本当に剛性が上がってるんであれば、純正が中空シャフトの車両とかでそれを無垢のシャフトにした場合とかだけでしょう、ついでに言えばその場合純正より確実に重くなっているはず。

この場合は中空から無垢になったから剛性がアップしているわけで、残念ながら材質は全く関係ないわけです。

え~!でもシャフトをクロモリに変えたら剛性感上がったよ!お前の言ううことは間違ってねぇか?とか言うそこのあなた!あなたのいうことは間違っていないです。

そうなんですよ!変わるんですよ!剛性感が!ですけども剛性は変わってないです。

でも、実は物性で変わっている事は有るんです、それは振動の伝わる速度や減衰特性が変わります。

これは、人間が振動を感じ取るときの、感じ方に影響して剛性感が変わってくるんですね。

本当にくどいですけども、剛性は変わらないです。

このように巷で言われている売り文句が本当の事とは限らないという事はよく認識して欲しい。私の書く記事も含めて必ずしも正しいとは限らないのだ、本当のことは何なのか、そしてこの記事が自分は何を求めて、どうやったら自分の目的を果たせるのか、あるいはどう使うのが効果的なのかを考えてカスタムをして行ってほしいです、チタンボルトにしても、軽量化しつつ剛性を上げるという目的に使うより軽量化しつつ剛性コントロールするために使用箇所を吟味すれば問題はないわけで、特性をよく理解して使い分ければ非常に効果的な結果を引き出せるようになるかもしれません。

この記事がそうした事の一助になれば幸いです。

ではまた