ステンレスは錆びる 電蝕の話(正しくはガルバニック腐食だそうです)
電蝕という呼び方はこの事象では適切ではないとの指摘を受けました、正しくは異種金属接触腐食(英語表記:galvanic corrosion)のことをガルバニック腐食(ガルバニ腐食)と言うそうです。
とんだ勘違いでした、ご指摘くださった方に感謝いたします、ありがとうございます。
ボルトが錆びちゃったからステンレスに変えるのはちょっと待った。
今のSVだとあまりいないかもしれないですが、ボルトが錆びちゃったからとか、錆びる前にステンレスのボルトに変えちゃおうとか言う人がいたりする人がいるかもしれませんがちょっと待ってください。
現在のバイクのエンジンはほぼ、アルミ製です。
アルミとステンレスといった異種金属が接触しているところに電解液(水分)が介在するとガルバニック腐食が起こります。
ガルバニック腐食とは?
金属には「イオン化傾向」という性質があり、金属元素によってその度合いが異なります。(多分中学か高校の化学で習ってるはず)
2種類のイオン化傾向が異なる金属に水分(電解液)が加わることで「ボルタ電池」が成り立ち、イオン化傾向の強い金属の原子から電子が放出され、腐食してしまう、という現象のことです。
アルミとステンレスではアルミの方が錆びやすくエンジン本体のほうが先にガルバニック腐食をおこしてしまいます。
つまり、アルミでできているエンジン本体のネジ穴がステンレスネジを使うと先にガルバニック腐食でやられます。
これを防ぐには電気的に絶縁するか、全く水分などの電解質が介在しないようにする必要が有ります。
絶縁ブッシュなどで絶縁するか、スレッドコンパウンドなどグリスで水分が入り込まないようにするかが主な方法ですね。
あまりバイクで絶縁ブッシュは使うことはないですけど。
あと、ステンレスは
摩擦係数が大きく(鉄鋼の2倍)為熱が発生しやすく
熱伝導率が小さく(鉄鋼の1/3)為熱が逃げにくい
熱膨張係数が大きく(鉄鋼の2倍)為おねじとめねじが密着しやすい
その為、スチールのボルトよりもかじりやすい。
また、高温環境下の場合は、さらにかじりやすくなるため、鉄鋼製のねじでも注意が必要です、ですのでエキゾーストのフランジボルトとかはかなりリスキーです。
そして、緩める時かじるとステンレスボルトはあっさり折れます。
純正ボルトがスチールにメッキで確かに錆びやすいのですが、ここで安易に錆びやすい、見た目が悪いからとステンレス製に交換するとエンジン本体のアルミでできている部分が全部腐食してネジ山全部パアとかで交換とかになると泣くに泣けません。
ちなみに鉄のボルトでも電蝕は起こりますが、鉄の表面に亜鉛やクロムのメッキを施してあって、その亜鉛が犠牲電極となって先にガルバニック腐食を起こすので、鉄の素地が出る前に交換すれば問題ないというわけです。
何故純正がステンレスボルトを使わないかお判りいただけましたでしょうか?
メーカーはコスト、強度区分、使用箇所、特性などを考慮した上で採用するネジを決めています。
なので、安易にネジを交換すると大変なことになってしまうこともあるのです。
ちなみにステンにスチールやアルミでも同様です。
そこでお前チタンボルトはどうなんよ?という人いますよね、電蝕には非常にチタンは強いですが。チタンはかなり強力な不働態膜があるので起りづらいです。
ただ、それでもチタンとアルミが接触した状態で水中に有るとかだと起こるらしいので、普通では起こりにくいけど気をつける必要は有るようです。
それより、チタンボルトはステンレス以上にかじりやすいので、取り付け時にはタップでさらってからスレッドコンパウンド塗って締め付けるのがベターだと思います。
余談ですが、ホイールのエアバルブキャップをバルブは純正のままのゴムと真鍮の奴にアルミのキャップを使うのも気をつけておかないとガルバニック腐食を起こしていざというとき外せないという事になりかねないので注意してください、ちょくちょく外していれば平気でしょうが、アルマイトがあるうちは大丈夫ですが無くなるとガルバニック腐食が進んじゃいますのでこれも注意です。
とまあ異種金属同士の接触には気を付けましょうという話でした。
ではまた。
ディスカッション
コメント一覧
それは電食ではなく異種金属接触腐食です
コメント有難うございます。
勉強不足で申し訳ないです。
異種金属接触腐食も電食の範疇と認識していましたが、違うのでしょうか?
ちょっと調べてみました、どうやら迷走電流腐食とガルバニック腐食で区別をしているんですね。
不勉強でした、わざわざありがとうございます、もっと勉強します。
https://www.asahimekki.com/blog/4357.html