なぜボルトのトルク管理が必要なのか トルク管理の必要性

2019年5月23日

トルク管理の重要性

バイクには数多くのボルトが使われています、そしてそのボルトには締め付けトルクの指定がなされています、ではなぜボルトには締め付けトルクの指定が有るのでしょう?でもその理由の前にボルト締結のメカニズムについて知っておきましょう。

ボルト締結のメカニズム

ボルトがなぜ締まるのかというと、締め付けたことで伸びたボルトが元に戻ろうとする力が働くためです。ボルトを締め付けると、ボルトには引っ張り方向の力がかかります。引っ張られて伸びたボルトは、いわば強力なバネのようなもので元に戻ろうとします、その力で締め付けているもの(部品等)を圧縮します。ボルトが締まっているとは、引っ張られて伸びようとする力と、戻ろうとして締め付けるものを圧縮する力のバランスが取れている状態の事です。

ボルトの締め付けが弱いと、周りの振動や熱などの影響でこのバランスが崩れ、ボルトは緩んでしまいますし、逆に締め付けが強いと、締め付けられた物(部品等)が破損したり、ボルトが切れてしまいます。

ボルトの締めすぎると何がまずいのか?

締めつけたボルトを緩めると、引っ張られて伸びていたボルトは元の形に戻ります。しかし、締め付ける力をどんどん増やしていくと、ある時点からボルトは元の形には戻らなくなります。この境界を「降伏点」と言います、ボルトが完全に元に戻る範囲を「弾性域」(弾性変形範囲)、完全に元に戻らなくなる範囲を「塑性域」(塑性変形範囲)といいます。さらに締め付けていくと、最終的にはねじ切れてしまいます。この点を「破断点」といいます。

ボルトが緩まないようにするには、なるべく大きな力で締め付けることが良いのですが、ボルトを塑性域まで締め付けてしまうと、破断点に近づくためそれは危険です。また、塑性域まで締め付けてしまったボルトは変形して元の形に戻らないため、再利用はできません。従って、ボルトは弾性域の範囲内で使用する必要があります。ただし、エンジンのヘッドボルトなど、塑性域で締め付ける特殊なボルトもあります、このボルトはもちろん一回限りの使い捨てのボルトです。

適切なトルク管理のために

弾性域から降伏点を越え塑性域に入ると、トルク(締め付ける力)の増加に対し、ボルトが伸びる割合は大きくなります。しかし、人間の五感でこの変化を感じるのはなかなか大変です。ある程度経験を積んだ作業者でも、緩みを防ぎたいという気持ちが無意識に働き、オーバートルクになりがちになります。また、最近では鉄以外のさまざまな素材が使われています。アルミや樹脂などの部品は、鉄製のものに比べ柔らかいため、同じように締め付けると部品自体を破損させてしまう可能性が高くなります。

トルク不足によるボルト・ナットの緩みや、オーバートルクによるボルトや部品の破損は、重大な事故を発生させる原因となります。そのため、経験や勘だけに頼ったトルク管理でなく、トルクレンチを用いた正確なトルク管理が必要なのです、なので各ボルトには締め付けトルクが指定されているわけです。

とまあ、ここまで書いといてなんですが、じゃあすべて厳密に管理しないと駄目なのかというとそこまで厳密に考えすぎなくても良いです、という話になります、厳密にいうと気温差やネジに油が付いているいないでも変わりますし、結構ばらつきが大きいんですね、 なのでトルクレンチで測定したから大丈夫で測定器を盲信してはいけません 、大事なのは測定器で測ることではなく、正しい締め付け力で締め付けることです。

道具を盲信するのではなく、感覚を身に着けることも重要です、そのためにもトルクレンチなどでトルク測定をして感覚を身に着けるという意味でも普段からトルクレンチで締め付けるという事は重要なのです。

ではまた。

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Posted by wakataka